定年後も仕事をする場合、50代のうちからある程度の準備をしておくことが豊かな老後につながります。刻々と変化する社会情勢を見極めつつ、どのような仕事をして行ったら良いか、方向性だけでも決めておきましょう。
2020年の日本では、約8割の企業が60歳を定年とし、「継続雇用制度の導入」によって65歳までの雇用を維持するという方法を取っています。しかし、将来的には65歳あるいは70歳が定年となる可能性があります。
このまま人口減少や少子高齢化が進めば、あらゆる企業が労働力不足に直面せざるを得なくなるため、スキルや経験豊富な高齢者の活用が求められているからです。
一方では、コロナ危機を契機に「働き方」そのものが大きく変わろうとしています。テレワークの普及やAIの進歩により、人材が必要な分野とそうでない分野とがより明確になって来ます。
定年後も仕事をする場合は、そのような社会情勢の変化や世界経済への動向にも目をむけ、50代のうちから方向性を決め、準備をしておきましょう。
定年後の働き方は3通り
定年後の働き方は、主に次のような3通りに大別されます。
引き続き現在の会社で働く
現在、60歳で定年になったとしても、年金が支給される65歳までは、希望すれば同じ会社で働くことができるようになっています。
さらに、2021年に施行される「改正高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年の引き上げ」「70歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかが、企業の努力義務として定められています。
現在の職場が自分に合っていて、仕事にやりがいを感じているなら、定年後も引き続き現在の会社で働くといった選択が最も現実的と言えます。
ここで注意したいのは、多くの企業が採用している「継続雇用制度」には「勤務延長」と「再雇用」の2通りがあることです。
「勤務延長の場合」は、60歳を過ぎても同じ条件で働くことができますが、「再雇用」の場合は60歳でいったん退職となり、その後は新たな雇用契約を結ぶため、肩書きや賃金などの条件が変わってきます。
多くの場合、肩書きはなくなり、賃金は定年時の5割から7割の水準になるので、収入減少については、あらかじめ考慮しておきましょう。
また、65歳以降は再雇用しない企業もあるので、その場合は退職し、引き続き仕事をしたい場合は新たな仕事を探すことになります。
転職・再就職する
60歳時に定年退職し、転職・再就職するという道もあります。
心機一転して新しい仕事に挑戦してみたい方、今までの経験を他の分野で生かしてみたい方、都会から離れ生まれ故郷で働きたい方など、動機はそれぞれですが、60代での転職・再就職は決して不可能ではありません。
大企業の正社員は無理でも、地方企業や中小企業は人手が不足しており、経験豊かな人材を求めているからです。
この場合も50代のうちから着々と準備しておくと、有利に進めることができます。
やりたい分野、得意な分野の資格を取得しておくのもそのひとつです。
特にIT関連資格、介護関連資格、メンタルヘルス関連資格は人材不足が続いているので、60代以降も働く場合は取得しておいて損はないと言えます。
また、現在の仕事の取引先や関連会社に転職・再就職することもできるので、人脈を築いておくのもおすすめです。
独立・起業する
第二の人生において「生きがい」を重視するなら、独立・起業するという選択もあります。
近年では、60代以降のシニア起業家が増加傾向にありますが、その理由として「豊富な経験を生かすことができる」「退職金を起業資金に当てることができる」「もし失敗しても痛手が少ない」ことなどがあげられます。
「社会保険労務士」「中小企業診断士」「行政書士」「司法書士」「税理士」「ファイナンシャルプランナー」などの資格を取得していれば、現役時代のキャリアやコネを生かした独立が可能です。
また、趣味を生かしたカフェやショップをオープンするという方法もあります。個性が求められている現代、オリジナルメニューやオリジナルグッズを提供するカフェやショップは、口コミで広がりやすい時代です。
ネット環境が整備された現代では、リアル店舗を持たなくてもネット上にショップをオープンすることもできます。
テレワーク(リモートワーク)のさらなる普及が見込まれることから、IT関連の技術や経験のある方は、フリーランスとして活躍する道もあります。